チーズのこと

    テーガンゼーのチーズメーカーさん

 今年は予想外に爽やかな9月でした。東京で残暑に悩まされたのは最初の1週間のみ。その後はとくに朝晩の気温が下がって過ごしやすくなっています。意外にもドイツでは夏の陽気が続いているとのことでしたが、検査や輸送の段取りがサクサク捗って出荷してもらえました。あとは飛行機ですから、あっという間にチーズの包みが着きました。

 このコロナ禍がなければ、この夏は山での放牧に連れて行ってもらう計画だったのです。昨年の7月に訪問した時はちょうど出産のタイミングで、どこの牧場にも愛らしい仔牛がたくさん、囲いのある小さな牧草地で遊んでいました。一頭一頭名前を丁寧に教えてくれるのですが、なかなか違いを見分けられません。オーナー家族はすごいなぁと感心してしまいました。

 仔牛はしばらく限定的なエリアで大事に成長を見守られ、その後に山での放牧デビューとなるのだそうです。そこへ今年は連れて行ってもらおうかと相談していたのです。子どもの頃に何度も読み返した、アルプスの少女ハイジの世界を垣間見られるのかとワクワクしていたのですが叶いませんでした。ともあれこんな月日も皆んな元気に過ごすことができ(今年も仔牛が生まれ、チーズメーカーさんの輸出担当者さんにも赤ちゃんが産まれました!)変わらぬ美味しいチーズを取り寄せられることができるなんて嬉しい限りです。これらのチーズはタンネの通販サイトでお買い求めいただけるので是非お楽しみください!

 ドイツで一番ポピュラーなチーズはクワルクというフレッシュチーズです。ヨーグルトのようにそのまま、或いはドレッシングやソースの材料として、そしてもちろんチーズケーキにと大いに活躍する食材です。でも賞味期限が短くて輸入には向きません。ですので、タンネが輸入しているのは全てセミハードからハードのチーズばかり。ぎゅっと固める大きさ・熟成期間が異なり、したがって乳脂肪や塩分も微妙に違います。いずれも元々の牛乳の味わいが「決め手」ですので、近年ますます注目を集めるグラスフェッド乳〜放牧されて牧草だけを食べている牛の乳にこだわっているメーカーさんを選びました。牧草というともちろん緑の葉っぱがメインですが、そこに咲く小さな花々がまた大事な芳香のもとになるのだそうです。5月頃に遊びに行くと、さぁ花が咲き始めた牧草地の香りをたっぷり吸って!と連れて行かれます。最初は戸惑いましたが、今年その機会を失ってみるととても懐かしく思い返しました。もちろん、チーズを噛みしめれば、そこはかとなく感じることができます。そのためにも召し上がる時は室温に戻し、旨味と香りが十分に引き出されているタイミングで召し上がっていただきたいです。

      アルゴイの作り手さん

 作り手の皆んなに会える日を楽しみに、そして清潔で健康そのものの牛たちに会う日を楽しみに、私自身もチーズをたくさんパンと一緒に楽しみたい秋の始まりです。